社長日誌

DIARY

歩兵の本領

 浅田次郎氏の短編集です。
 全部で9編収録されており、どれも昭和45年頃高度経済成長期の中、大きな矛盾を抱えたまま拡大していく自衛隊の内側を書いた作品です。
 最初の2編は1997年に執筆され、残りの7編は1999年から2000年にかけて執筆されているので作風に微妙な違いが感じられますが、全編を通して自衛官経験者でもある浅田氏の自衛隊や旧軍人に対する愛情がにじみ出ております。
 最終話のタイトルはこの文庫タイトルと同じで「歩兵の本領」になっておりますが、この中で軍歌が紹介されております。

 万朶の桜か 襟の色
 花は吉野に 嵐吹く
 大和男子と 生まれなば
 散兵戦の  花と散れ

 尺余の銃は 武器ならず
 寸余の剣は 何かせん
 知らずやここに二千年
 鍛え鍛えし 大和魂

 作品中ではあかされませんでしたが、後で調べてみると、この軍歌のタイトルこそが「歩兵の本領」でした。