枕の歴史
枕の歴史は数百万年前まで遡る、という説があるほど古いと言われています。
なぜ、そう言われているかというと、1924年に南アフリカでアウストラロピテクスの化石が発見された際、化石の頭蓋骨の下に石が敷かれていたからです。
これが、祭司的な意味で置かれたのか、実際の枕として使われたのかは分かりませんが、最も古い枕の痕跡だと言われています。
では、今のような枕がいつ頃から広まったのかというと、11世紀末に始まった十字軍の遠征からだと言われています。
枕の起源
遠征先のイスラム文化圏でクッションとして使われていたものが、十字軍によってヨーロッパに伝えられ、ヨーロッパの気候にあう素材(羽毛など)を使って枕が作られるようになりました。
また、中国には「陶枕(とうちん)」と呼ばれる陶器で作られた枕があります。
7世紀頃、唐の時代に作られ始めた枕で、美術的に価値があるものも多くあります。中が空洞になっていて、空気の流れが良く、ひんやりとしているのが特徴です。日本にも鎌倉時代に伝わり、上流社会の人々の間で、夏用の枕として使われたと言われています。
日本の枕
日本の枕も、時代と共に変化してきました。
江戸時代頃までは、木の枕が主流でした。
この頃の枕は、結った髪の毛を守る為に、頭ではなく首に当てるものとして使われており、眠りやすさを考えたものではありませんでした。
髪型に合わせて、箱枕やばち型枕など様々なものがありました。
明治時代に入ると、円筒形の布にそば殻や籾殻を入れて、両端を縫い合わせた「くくり枕」という枕が登場しました。この頃は、枕を手作りすることが当たり前でした。
ベッドの歴史
歴史上最初にベッドが使用されたと言われているのが、紀元前のエジプトです。テレビなどで、埋葬品や、壁画に描かれたものを見たことがある人もいるかもしれません。形も現在に通じるものがあります。
この時代のベッドの特徴としては、動物の皮や、畳んだ衣類をマットレスとして使っていたことです。
その後、文明が発達していきますが、ベッドは古代エジプトのものをベースに改良が加えられていきました。また、古代ギリシャなどでは、昼間は長椅子として兼用されていたそうです。マットレスには、羽毛や藁などを詰めた袋状のものが使われました。
ヨーロッパでは、十字軍遠征に参加した兵士達が、カーテンを持ち帰り、それがベッドのまわりに取り付けられるようになりました。この頃は、今のように「寝室」と言った区切りがなかったのですが、これにより、ベッドは独立した部屋のような機能を持つようになりました。これが、後の「天蓋付きベッド」のはしりです。
18世紀に入ると、マットレスが進化しました。袋状ではなくなり、中身も獣の毛などを詰めたコンパクトなものになりました。その後、更に発展を続け、金属性のベッドが大量生産されるようになったり、マットレスにクッション性のある「スプリング」が使われるようになったりと、現在のベッドへとつながってきました。
日本には、奈良時代以前に中国から伝わりました。
奈良の正倉院には、聖武天皇のベッドが保管されており、早い時期から貴族の間で使用されていたようです。しかし、平安時代に畳が登場したことにより、ベッドは一度、廃れてしまいます。時は流れて明治時代に入ると、欧米の文化と共に再びベッドが伝わります。
初めは、病院や軍隊といった一部で使用されるものでしたが、ホテルや上流階級の人々に使われるようになったことから少しずつ広がり、大正時代には遂に、国産ベッドの会社が登場しました。こうして日本でもベッドが広まっていったのです。
ワンポイント
なに気なく使っている寝具にも、こんなにたくさんの歴史がありました。
今夜は、寝具の歴史を感じながらお休みになってはいかがでしょうか。